■解説:土屋 敢(北千葉整形外科美浜クリニック スポーツ医学・関節外科センター センター長/医学博士)
〔プロフィール〕
千葉大学医学部整形外科大学院卒業。医学博士、日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会スポーツ専門医/脊椎脊髄病専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、千葉県サッカー協会 正会員・スポーツ医学委員会副委員長。育成年代のサッカー選手をはじめとした多くのスポーツ選手の治療経験や各カテゴリーの代表への帯同経験を生かし、スポーツ選手の的確な診断、手術、治療、さらには予防を施すことで各選手が将来、様々な形でスポーツに関わるためのサポートを行っている。2006年〜2008年には、北京オリンピックサッカー男子日本代表チームドクターも務める。
■実技協力:北千葉整形外科美浜クリニック
子どもの訴えを聞き逃さない!
選手生命を脅かす原因を早期発見&治療!!
運動器検診の実施に伴い、育成年代における適正なスポーツのあり方について関心が高まっています。
そこで、保健室や部活動でぜひ知っておいてほしい膝のスポーツ傷害(外傷と障害)について、実技を交えてわかりやすく解説します。子どもたちの体の異変を早期発見・治療し、競技を断念することのないよう、ぜひ現場で生かしていただければ幸いです。
指導・解説は、千葉県を中心に、スポーツ整形外科医として多くの選手と向き合っている土屋先生。選手の将来を考え、親身になって治療する姿勢に、多くの選手が信頼を寄せ、県内各地から集まってきます。
スポーツ傷害とは?
スポーツ傷害は、打撲や捻挫、骨折など外力によって発症するスポーツ外傷と、筋膜性腰痛、野球肘、シンスプリント、オスグッド病、疲労骨折など使い過ぎ(over use)によって発症するスポーツ障害の総称です。
2つの高校でスポーツ傷害の内訳を調べたところ、スポーツ外傷は360例中213例、スポーツ障害は147例と、およそ6:4の割合で発症していることが分かりました。使いすぎで起こるスポーツ障害は決して少なくないのです。
また、スポーツ傷害による退部の割合で言うと、70%以上の生徒が使いすぎでスポーツ障害によって競技を断念せざるを得ない現状が見えてきました。痛みが軽くなればすぐに復帰しての繰り返しで、結局100パーセントのパフォーマンスが出せず、泣く泣く競技を離れなくてはならないからです。
ケガなどのスポーツ外傷を発見することは比較的安易ですが、発見も困難かつ復帰にも時間のかかるスポーツ障害は選手生命に大きく関わるだけに、痛みの部位を正確に確認し、生徒に伝え、きちんと受診するよう指導することが何よりも大切です。
■イントロダクション
■スポーツ傷害とは?
*スポーツ外傷とスポーツ障害/スポーツ傷害の内訳/スポーツ外傷・障害の発生部位と退部の割合/発生部位別の症例/種目別の症例
■膝のスポーツ障害の圧痛部位と好発年齢
<10歳前後に最も注意すべき疾患>
■離断性骨軟骨炎
*症状/痛みの訴え方の特徴/治療方針
<成長期の代表的な膝のスポーツ障害>
■ヨハンソン病
*症状と好発年齢/≪実技≫圧痛部位の確認/治療の経過について
■オスグッド病
*レントゲンの病期分類/チェック方法/オスグッド病の予防策/発症原因〜足関節背屈制限〜/
≪実技≫チェック方法①しゃがみ込みテスト ②片脚スクワット/大腿四頭筋ストレッチ
<起こりやすい膝のスポーツ障害>
■腸脛靭帯炎
*症状と対策/≪実技≫圧痛部位の確認(グラスピングテスト)
■ジャンパー膝
*症状/≪実技≫圧痛部位の確認
■半月板損傷
*症状/手術症例の検討/術後のスケジュール/≪実技≫圧痛部位の確認
■膝蓋骨脱臼
*症状/膝蓋骨と大腿骨の位置関係/原因と病態/膝蓋骨脱臼を起こしやすい構造上の特徴/診断と治療/術後のスケジュール/脱臼の早期整復について
≪実技≫膝関節の解剖/発症しやすい要因:にらめっこ膝(X脚)/圧痛部位の確認
<起こりやすい膝のスポーツ外傷>
■前十字靭帯損傷
*症状/診断/発症状態と治療方針/手術後のスケジュール/前十字靭帯損傷と学生スポーツの問題点/成長期(骨端線未閉鎖)の発症/術後の再断裂について
≪実技≫発症しやすい要因:切り返し動作(カッティング)/リスクのあるトレーニング ①馬跳び ②ハードル
■内側側副靭帯損傷
*症状/≪実技≫徒手的なチェック方法/復帰の目安
<診断方法と応急処置>
■スポーツ障害(Over Use)とスポーツ外傷の対応
≪スポーツ障害・実技≫膝の圧痛部位の確認/保健指導と応急処置について
≪スポーツ外傷・実技≫動けない場合の応急処置/シーネ固定/ニーブレース
■終わりに
*選手のプレイしたい気持ちと身体の痛みに向き合うとき/
監督やコーチ、選手に伝えたいこと/養護教諭の先生方に伝えたいこと
(108分)
2015.12